住宅産業新聞 “トップインタビュー 日本グランデ株式会社 代表取締役社長 平野雅博氏
企画・設計から販売・管理までの一貫体制「お客様の笑顔のため」に情熱を注ぐ”の記事掲載

2008年11月16日

 

道内の住宅・不動産業界の長期低迷状況を打開する参考に、業界団体や経営トップに意見を聞くインタビューシリーズ。今回は、札幌の分譲マンション市場で創業以来の全物件を竣工前に完売させてきた日本グランデ㈱代表取締役社長の平野雅博氏に同社のマンションづくりへのこだわりを聞いた。


理想を叶える住まい

―まずマンション市況の現状把握についてお聞かせ下さい。

平野 米国発の金融危機が世界中に連鎖して、円高、株安などの影響で社会不安が増大した結果国内需要が下振れしております。また雇用に形態が正規社員、契約社員、派遣社員などと、多様さを増し、給料のアップも望めません。そうした状況のため「持ち家」からは、以前のような社会的ステータス性が失われつつあります。それに伴って分譲マンション市場では、新規の動きが鈍いのに加えて、在庫消化も進まなくなっています。プレオープンの集客が芳しくない、価格の設定が難しい、完成在庫処分を優先させなければならない。そうした要因が複合的に作用して、手詰まり状態になっているのが現状です。

―確かに最近は、全戸一括即売が久しく途絶え、竣工前完売も激減しています。そうしたなかで御社の物件が好調な要因は何だと思いますか。

平野  弊社は「ありきたりのマンションは創らない」という思想の下で、一棟ずつ丁寧に創ることに専念してきました。そのために企画・設計から販売・広告製作、さらに管理も自社で行う一貫体制を作りあげています。プランニングの際には弊社の建築士と企画部スタッフが、まず現地の状況を確認したうえで、弊社の基準とコンセプトをベースにして議論を尽くし、独創的な外観、多彩な共用施設、ランドスケープ、設備・仕様などを作り込んでいます。それによって徹底した差別化を図っていることが、お客様に支持されているのだと思います。

―それにしても、全ての物件が竣工前に完売しているというのは凄いことですね。

平野 ライフスタイルの多様化を背景に、現在のマンションは、お客様の理想を叶える「提案する住空間」の時代に入りつつあります。そこで弊社では、間取りから住宅設備、内装材やドアの把手にいたるまで、セレクトシステムを導入しています。そのためお客様それぞれが、現場所長や専任の建築士・コーディネーターと打ち合わせを重ねながら理想の住まいに仕上げていきます。一回に約二時間の打ち合わせを平均で六~七回、最も多い方では三十回という方もいらっしゃいました。そのようなシステムを採っておりますので、発売開始はできるだけ早めなければなりませんし、システムを存分に活用して頂くためには多様な選択が可能な段階で決断して頂かなければなりません。

―そこまでになると分譲ではなく、注文住宅の世界ですね。

平野 現在ではマンションを「終の棲家」として選ぶ人が増えています。そのためには部屋数、収納の広さ、キッチンを主体とした設備機器、和室か洋室かなど、お客様の希望が十分に叶えられなければなりません。また弊社では、契約された方たちと上棟式を行ったり、工事の進行状況を写真やトピックスとともに送ったりなど、お客様の夢が叶っていくプロセスを定期的にお知らせするようにしております。


労力を惜しまぬ体制

―セレクトシステムはゼネコンが嫌がると聞いておりますし、コストもアップするのではないでしょうか。

平野 マンションで一戸一戸の仕様を変えるのは、ゼネコンさんにとって確かに大変な作業です。そこで弊社では普段からメーカーやゼネコンと協力体制を築くことに腐心しておりますし、交渉力を高めるように努力しております。また設備や機器などは、製造元から直接仕入れてコストダウンを図っております。そのうえでモデルルームのオプションに関しては、個別の価格を明示して、上乗せの概算額が判るようにもしております 。

―それでも全ての住戸が異なるというのは、チェックの面でも大変なことですね。

平野 売主に対する信頼度は施工管理の質の問題だと思います。そのため弊社では監理も自社で行い、耐久性や構造だけではなく、細かな部分についても妥協のない監理を行っております。結果として造り手にとっては非常に難しいテーマ、高品質とリーズナブルの追求という相反した目標を高い水準でクリアし、お客様にとって喜ばしい物件を提供できていると思っています。要は私どもの時間と労力を惜しまない。その細やかな対応が、お客様のニーズを着実に吸い上げて、信頼の構築に結び付いていると考えております。

―そうした対応を背景に御社の販売は順調なようですが、今後の業界全体の動きはどのように見ていらっしゃいますか。

平野 建築基準法の改正に伴った建築確認降下遅延の影響はまだ見られますし、在庫の問題もありますので、新規の供給戸数はもっと少なくなると見ています。また地価や資材の高騰が一段落しましたので、マンションの販売価格の上昇も一服すると思います。結果として、新規の人気が回復してくるのではないでしょうか。

―最後に、御社の今後の方向性をお聞かせ願えませんか。

平野 創業以来一貫としてお客様第一主義の姿勢で取り組んでまいりましたが、これからもお客様の笑顔のために素敵で魅力的なマンションづくりに情熱を注いで、お客様の夢を叶えて感謝される作品を創っていくことができれば幸いです。また現在のような低迷市況では、どこかが元気を出さなければならないという気概を持って、頑張っていきたいと思います。

―ご多忙中、ありがとうございました。