■温泉とは

私達が住む日本は、世界でも有数の温泉国であり、年間延1億人が利用すると言われています。温泉旅行だけでなく、近頃の日帰り温泉ブームによって多くの人がさらに身近に温泉を楽しんでいます。温泉の内部は高温のマグマになっているため、地中を100m掘るごとに温度は2℃前後上昇します。つまり、地面を1,000mほど掘って湧出した地下水は、温泉の定義によると「温泉」なのです。このようなことから、温泉は自然の恵みというイメージがありながら、掘削技術の進んだ今、東京都心でも温泉地が次々と誕生する時代なのです。
都心部に住んでいる方にとって、身近なところで温泉入浴ができることは、健康管理・ストレス解消などの点からすばらしいことだと思います。
「温泉とは何か」と聞かれて、正確に答えられる人がどれだけいるでしょうか?たいていの人は、「お湯が湧き出てくるところ」といったものでしょうか。正解は「地中から湧出する温泉、鉱水、および水蒸気、その他のガスで、温泉源での温度が25℃以上のものか鉱水1kg中に定められた量以上の物質が含まれているもの(温泉法)」となっていて、戦前は鉱泉などとよばれていた温泉の低いものも、1948年の温泉法制定以後の基準では温泉となるものが多いのです。また、その中に含まれている成分によって、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉(炭酸泉)、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉などに分類され、それによって効能が異なります。二酸化炭素泉(炭酸泉)は高血圧症や動脈硬化症、塩化物泉は冷えや慢性婦人病、硫黄泉は慢性の皮膚病や関節疾患といった具合です。療養のためなら、それぞれの症状によって選べば良いわけです。それ以外に共通の効果として、湯熱による血行を良くする作用、水圧による血圧の著しい低下を防ぎバランスを保つ働き、浮力と水の抵抗により運動量が増加するなどのことが言われています。また、環境が変わることで脳が刺激され、ホルモンの分泌を促進し、ストレスも解消することができます。

■温泉の根源

湯を使う風呂が一般的でなく、衛生に関する知識や医療が不十分であった時代には、温泉はけがや病気に驚くべき効能があるありがたい聖地であった。各温泉の起源伝説には、鹿や鶴や鷺(サギ)などの動物が傷を癒した伝説や、弘法大師等高名な僧侶が発見した伝説が多い。このような場所は寺や神社が所有をしていたり、近隣共同体の共有財産であった。江戸時代頃になると、農閑期に湯治客が訪れるようになり、それらの湯治客を泊める宿泊施設が温泉宿となった。湯治の形態も長期滞在型から一泊二日の短期型へ変化し、現在の入浴形態に近い形が出来上がったのです。

■温泉の三要素

温泉には以下の三つの要素がある。

1.泉温
泉温は湧出口(通常は地表)での温泉水の温度とされる。泉温の分類としては鉱泉分析法指針では 冷鉱泉・微温泉・温泉・高温泉 の4種類に分類される。 泉温の分類は、国や分類者により名称や泉温の範囲が異なるため、世界的に統一されているというわけではない。

2.溶解成分(泉質)
溶解成分は人為的な規定に基づき分類される。日本では温泉法及び鉱泉分析法指針で規定されている。鉱泉分析法指針では、鉱泉の中でも治療の目的に供しうるものを特に療養泉と定義し、特定された八つの物質について更に規定している。溶解成分の分類は、温泉1kg中の溶存物質量によりなされる。

3.湧出量
湧出量は地中から地表へ継続的に取り出される水量であり、動力等の人工的な方法で汲み出された場合も含まれる。

■湯の花

湯の花(ゆのはな)とは、温泉成分が析出、もしくは沈殿したものである。またそれらを集めた入浴剤も湯の花と呼ぶ。湯花、湯の華、湯華など複数の漢字が当てられる。
高温で湧出した源泉が、大気温や浴槽との温度差によって冷却されていく過程で、源泉中に溶存していた数々の温泉成分が析出してきたり、源泉に混在していた物質の沈殿が発生する。析出物沈殿物は、粒子状になって浴槽の底に沈んだり、糸状になって浴槽内を漂ったり、浴槽の壁面や湯口に付着する。浴槽内に漂う湯の花は汚れと誤解されることもあるため、注意書きを掲示している温泉も多い。
湯の花を集めて包装したものは、温泉地における土産の定番として広く流通しており、多くの温泉街で見かけることが出来る。家庭の浴槽に湯の花を入れることで温泉の気分を味わうことが可能である。ただし、単体の硫黄や金属の硫化物を含む湯の花は風呂釜を傷める。カルシウムやナトリウムの炭酸塩・硫酸塩でできている湯の花は腐食性がないため安全である。そのため、ボイラーなどによる追い炊き機能を有した浴槽で湯の花を使いたい場合は、その成分を事前に確認する必要がある。
湯の花の採取は、木製の樋に源泉を通して行う。一定期間源泉を通して湯の花を析出沈殿させ、その後源泉を流すのをやめて乾燥させる。乾燥後、樋の底に付着した湯の花を削り取り、容器に詰める。
湯の花の採取を行っている光景は、草津温泉の湯畑、明礬温泉の湯の花小屋、玉川温泉の大噴が有名である。

 
 
 
■Onsen

2003年頃から、「Onsen」を世界で通用する言葉にする運動がある。これは、一般的な英語訳である「Hot Spring」では熱水が湧出する場所、「Spa」では療養温泉という意味があり、日本の一般的な温泉のイメージとどちらも離れているからである。「Onsen」を世界で通用する言葉にする運動は、草津温泉などが積極的に行っています。

■基本的な入浴法

●全身浴
肩まで風呂につかる一般的な入浴法です。
42℃程度の温泉に肩までつかると確かに気持ち良く、本来の入浴スタイルです。
肩まで熱い温泉につかる気持ち良さはストレス解消になるので、肩まで温泉につかり、「ウー、極楽!極楽!」などと声を発することが、本来の温泉の楽しみ方であることを忘れてはならないでしょう。
また、体に負荷をかける分、ダイエット効果もあります。
なお、「全身浴」をしたとき、体の表面にかかる水圧を合計すると500kgから1tにもなると言われています。
また、体にかかる負担は、80kgの人に乗られたと同じとも言われています。
このようなことから健康入浴法としては、「半身浴」をおすすめするのですが、「全身浴」水圧が大きい分、リンパ液や血液を上半身に戻そうという力も働くので、静脈の流れが良くなり、血液やリンパ液の循環も活発になっていくという健康でのプラス面もあります。
ただし、心臓に負担をかけるなどのリスクをともない、のぼせやすく長湯ができないので、薬理効果が得られにくくなり、「分割浴」などの工夫が必要です。

●半身浴と腰浴
「頭寒足熱」(ずかんそくねつ)という言葉があるように、上半身は涼しく、下半身は温かくという健康増進法があります。
風呂、特に温泉にこれを応用しつつ、心臓への負担を軽くしたのが「半身浴」です。
浴槽に段差がある場合、そこに腰掛けると、下半身だけが温泉につかる状態になります。
段差がなくとも、腰掛けるものを置いてもよいでしょう。
状況に応じ、ヘソから胸までの間をお湯のライン(みぞおちのラインくらいが適当)とすればよいです。
腰までの入浴法は、「腰浴」と言います。
下半身から温泉成分が体に浸透、上半身の発汗促進などという効果がありながら、心臓に負担をかけない理想的な入浴法です。
下半身だけの入浴では、体が温まらない気がしますが、血液循環が活発になることにより、上半身も十分温かくなり、発汗が促進されます。
もし、上半身が寒く感じるようであれば、その時だけ肩までつかったり、湯を染み込ませたタオルをかけたり、乾かしたタオルをかけたり、かけ湯をするなどの工夫をすればよいでしょう。

具体的には、下記をモデルとし、体調に合わせておこなってください。

【1】心臓より遠い部分(つま先)から順に「かけ湯」をおこなう。
【2】入浴前に頭から10杯くらい温泉をかぶる。(立ちくらみ防止)
【3】5~6分の半身浴。
(これは一般的な温泉のような42℃程度の場合。できれば、38℃以下で20分程度が理想)
【4】軽く肩までつかる。(入浴の気持ち良さの体感)
【5】5分程度の休憩を入れながら、【3】【4】の入浴を繰り返す。(分割浴)
【6】体についた温泉成分を水(お湯)で流さず、温泉につけてから絞ったタオルでかるく体を拭く。
(バスタオルを使わないほうが、温泉成分が残こる。
肌についた温泉の薬効は3時間は持続する)
【7】30~60分ゆっくり休む。
上記を、1日3回までを限度とし、複数回(結局2~3回程度ということになる)実施ください。

●寝浴
風呂の構造が許せば、浅い風呂に首から下を温泉につけ、寝た状態で温泉につかる「寝浴(寝湯)」は、全身浴の気持ち良さがありながら、心臓への負担が軽く、理想的な入浴法です。
ただし、気持ち良さゆえに寝てしまって、必要以上の長湯になることに注意しなければなりません。

●浮遊浴
浴槽の縁に頭をのせ、体を自然に無理なく浮かせるような感じで入浴するのが「浮遊浴」です。
息を吸うと体が浮き、息を吐くと体が沈みますが、首に力が入らないように、この浮き沈みに身を任せましょう。
とてもリラックスできます。
できれば、他の人に補助してもらって浮かせてもらうのが理想的ですが、通常はこのようなことをやってもらうことはできません。
そこで、濃度の高い「塩化物泉」などを利用すると、より「浮遊浴」がしやすくなります。

部分浴
半身浴、寝浴以上に体への負担が少ないのが、体の一部のみを湯につける「部分浴」です。
循環器系に負担をかけず温熱等による効能を得ることができます。怪我や病気などで入浴できない場合にも有効です。

■症状別入浴法

●肩こり、四十肩・五十肩予防の入浴法
コリをほぐすには、40℃くらいのお湯につかるのが一番の解決方法です。
下記の手順で入浴すると効果的です。

【1】「半身浴」で体をあたためる。
【2】10分程度つかったら、両肩に交互にお湯をかけ(右手で左肩に、左手で右肩に)、ウォーミングアップする。
【3】浴槽に入ったまま、42℃くらいの熱めのシャワーを肩から首にあてる。水圧と水温のダブル効果。
【4】らにシャワーを首にあてながら、首を左右交互にゆっくり回す。(強く早くは禁物)
【5】最後にシャワーを肩にあてながら、肩を回す運動をする。
 5~10回程度を目安におこないましょう。

●腰痛のための入浴法
【1】38℃前後のぬるめのお湯につかり、その浴槽の中で、左右に腰をゆっくりひねる。
【2】膝で立って、同じように浴槽の中で腰をひねったり、まわしたりする。
【3】入浴後、体が温まっているうちに、軽い腹筋運動や背筋運動をおこなう。
【4】仰向けになり、その姿勢から両膝を両手で抱え込む。
 5~10回を目安におこないましょう。

●膝の痛み、変形性膝関節症のための入浴法
膝の痛みは、基本的には温めることで緩和されます。
その中でも入浴が一番手軽で効率のよい方法です。温熱効果による体温の上昇、血液循環の向上で、痛み神経の緩和や関節、靭帯などに含まれるコラーゲンという結合組織を柔らかくするのです。
これに、関節を動かす運動を加えれば効果的となります。

【1】朝晩2回の入浴を心がけてください。
【2】朝湯での湯冷めを避けるため、38~39℃の「微温浴」にて、「半身浴」「分割浴」を心がける。また、朝は、膝までをつける「部分浴」でもよい。
【3】入浴時に膝が十分温まったら、浴槽内で無理がない程度に屈伸運動をおこなう。痛みで膝が完全に曲がらない人でも浮力があるので、曲がるところまでいってとめてもよい。その際、滑って転ばないように膝に手をあてたり、浴槽の端を持つなどする。
10~15回くらいを目安に、膝の具合にあわせておこないましょう